先行研究のまとめ方【理学療法研究】

研究

Introduction

臨床疑問は明確になったけど、この疑問はまだ解明されていないのかな?
研究テーマが決まったけど、どうやったらレビューしたらいいの?
先行研究のまとめ方がわからない。
こんな疑問に答えます。
この記事を読むと、
研究は未知(まだわからないこと)を既知(もうわかっていること)にする作業
先行研究をレビューして自分の疑問をより具体的にする
先行研究のまとめ方
がわかります。

研究は未知を既知にする作業

いきなりこんな事言われても、「??」って感じですよね。でもこの感覚を持っていることはとても大切なことです。
既に教科書に載っているような臨床疑問を設定しても、それはただの勉強不足になってしまいます。
だから、
もうわかっていること(既知)
まだ世界で誰もわからないこと(未知)
しっかりと線引きしてこの未知の問題点を解決していくことが重要になります。
「世界で誰もわからないこと」、と書くと「そんな難しいことはできないよ」と弱気になってしまいそうですが、それは心配ありません。
先行研究に自分の発想を一個だけ加付け加える。それだけで十分に独自性や新規性のある研究になります。
Google Scholarのトップには「巨人の肩の上に立つ」と書かれています。
これはフランスの哲学者ベルナルドゥスの言葉を引用して、アイザック・ニュートンが科学の進歩について語った時の表現と言われています。
わかりやすく言えば「先人の積み重ねた発見(先行研究)に基づいて、新しい発見を行う事」ということになります。
だからこそ先行研究をレビューすることはとても大切なことです。

先行研究をレビューして自分の疑問をより具体的にする

先行研究をレビューするとは、先行研究を読んで既知と未知の線引きをしっかりしていくことです。多くの文献を読む中で、ぼんやりした疑問がよりくっきりしたものになって来ます。
例えば、「変形性膝関節症の診断を受けたリハビリ対象者に対してどんな保存療法が有用か?」と言った臨床疑問を持ったとします(ちなみにこの例は理学療法ガイドライン第1版のダイジェスト版 変形性膝関節症 2−1から作成しています。)。
文献検索サイトで先行研究をレビューすると、どうやら KL分類Grade1〜2までの変形では、食事指導や運動を含む自己管理、膝体操教室への参加という介入で、膝痛,身体機能,QOL の改善が期待できそうです。
そうすると黄色ラインの部分は既知になるので自分で一つ未知の部分を付け足したり変更したりしてみます。
例えば、
対象者としてKL分類3にも同様の効果がある?
介入として歩行エクササイズは効果的か?
心理的な改善ももたらすか?
と言った具合に変えて考えてみます。もちろん倫理的に問題なく、臨床的に意味のある変更でなければなりません。
こうすることで自分の疑問がより具体化され、臨床現場での問題解決に繋がるものになって行きます。

先行研究のまとめ方

ここからが先行研究のまとめ方になります。文献検索サイトで得られた文献をまとめていきます。
では先ほどの変形性膝関節症を例に取ってみます。
まとめるにはエクセルなどの表を用いてアブストラクトテーブルを作って行きます。
項目は、
発表年
著者・文献名など
研究デザイン
対象・評価・介入
結果
URL・PDFの保存場所
あたりを記録しておくと良いと思います。

発表年

次の文献名の部分にも記載するのですが、年だけの列があると新しい順に並び替えられたりと意外と役立ちます。

著者・文献名など

要するに誰のどの文献かわかればOKです。あの文献ってどれだっけ?を防ぐために絶対必要。
ただぐちゃぐちゃな順番だと分かりにくいので、一定の順番で記載することをオススメします。同じ形式の方が後で検索しやすいですし、スライドや論文に書き込む際、そのまま貼り付けでいけます。僕は、著者名:タイトル:雑誌名:巻ページ:年にしています。

研究デザイン

どのデザインの研究かでエビデンスのグレードが変わったりするので一応記録しています。最近はRCTかnon-RCTかメタアナリシスか観察研究かぐらいにざっくりな感じになっています。

対象・評価・介入

この部分と次の結果の部分は時間をかけて書き込みます。要するにPICOのPICの部分ですね。
対象者は取り込み基準、介入は群分け方法介入内容・期間・頻度などを書きます。
評価項目はどんな項目で判断をしているか、VASなのかWOMACスコアなのかROMなのかと言った感じです。

結果

結果も重要パートです。追跡率、評価項目の何が改善し、何がしなかったのか、どれくらいの変化量だったか。を書き込みます。

URL・PDFの保存場所

これもないとあの文献ってどこだ?が必発します。

アブストラクトテーブル例

発表年著者・文献デザイン対象評価介入結果URL
2009Jessep SA, et al.: Long-term clinical benefits and costs of an integrated rehabilitation programme compared with outpatient physiotherapy for chronic knee pain. Physiotherapy 95: 94-102, 2009.RCT対象: 慢性膝痛患者 64 名

介入: 12 か月間の自己管理プ ロ グラ ムと,理学療法
帰結: WOMAC,客観的機能能力,不安,うつ, 運動に関連した健康の信頼,医 療の利用頻度

 

臨床的指標には有意差なし自己管理プログラムと外来治療は,身体機能や心 理社会学的には同様に有益で,自己管理プログラムのほうが低コスト

 

https://〇〇
2008吉田朋巳. 他:変形性膝関節症患者の運動継続と膝痛軽減に対する外来指導介入の効果.日本看護学 会論文集:成人看護 II 38: 356-358, 2008.RCT対象: 膝 OA 患者15 名を,無作為に 3 群に分けた。

介入: A 群は〇〇、B 群は,△△、C 群は,□□

帰結:運動継続率,VAS

継続率は,A 群が 86.8%,B 群48.9%,C 群4.8%

VAS値は8 週後に A 群で2.0 cm減少,B群で1.1 cm 減少,C 群で0.1 cm 減少。

 

https://jglobal.〇〇

Conclusion

レビューの重要性、まとめ方に関する記事を作成しました。
このレビュー作業をどれだけするかで、内容の分厚さが変わってきます。また、テーマ設定を行う時に作っておくことで、学会発表時や論文執筆時の作業量を減らす事ができます。また、この作業は研究だけでなく、臨床業務においても評価項目の選定やリハビリ対象者への説明の裏付けなどに役立ってきます。いきなり全部作成は大変なので、1つづつ入力して行きましょう。数年後に見返すとあなただけのデーターベースになっているはずです。
先人たちの知恵を借りる→そこに付け足す1つがあなたのオリジナル

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