研究倫理ってなんだろう?e-learningサイト一覧あり【理学療法研究】

研究

 

研究倫理ってなに?難しそう。

オンラインでも学べるの?

患者さんと自分を守るためにしっかり把握しておこうね。

あと、e-learning受講は必須。倫理委員会に提出するからね。

Introduction

臨床研究の目的は、新しい知見を発見して患者さんの回復や生活の質(QOL)を向上させることです。正しい研究方法で得られた知見によって、科学的根拠に基づく理学療法が提供できるようになり、患者さんや社会に貢献できます。

しかし、どれだけ素晴らしい研究テーマであっても、倫理的問題があれば研究はできません。研究ができないどころか、研究対象者の健康や権利を侵害し、理学療法士としての信用を失ってしまう可能性があるのです。

倫理というテーマはとっつきにくく難しいので、特に研究初心者の人はおろそかにしがちではないでしょうか?

そこで今回は、研究初心者の人に向けて研究倫理について解説していきたいと思います。

臨床研究の倫理指針

いきなり研究倫理と言われても、どういう意味だかわかりづらいですよね。まず倫理とは、人が社会で守るべきルールのことをいいます。つまり、研究倫理とは、研究を進めていく中で研究者が守るべきルールのことを指します。理学療法研究を安全に進めていくにあたって、いろいろと守らなければならないことがあるのです。

研究倫理は「ヘルシンキ宣言」「人を対象とする医学研究に関する倫理指針」に沿って定められています。この2つに準じて研究を進めていかなければなりません。

なお、2017年から理学療法研究の分野でも倫理審査委員会での審査が必須条件となりました。このように、理学療法の分野で研究倫理が注目されはじめたのは、つい最近のことなのです。

ヘルシンキ宣言は医学研究の世界基準

ヘルシンキ宣言は、世界医師会によってフィンランドで1964年に発表されました。第二次世界大戦でのナチスによる非人道的な人体実験の反省をもとに、研究対象者の尊重・研究対象者の自発的な同意による研究参加・個人情報の保護・インフォームドコンセント・倫理審査会の承認・常識的な研究であることなどを定めています。ヘルシンキ宣言は医学的研究の重要な指針となっており、これに準じて研究を進めていくことが世界基準となっています。

人を対象とする医学研究に関する倫理指針

日本でも研究倫理に対する指針が定められるようになり、人を対象とする医学研究に関する倫理指針が文部科学省と厚生労働省によって2014年に発表されました。ヘルシンキ宣言と同様に、研究対象者を尊重することや人権を守ることなどが記されています。

研究者に求められる責務

研究者には誠実性・正確性・客観性・効率性が求められます。また、研究倫理から考えると、研究者に求められる責務とは以下の項目になります。

  • 適切な研究計画書の作成
  • 予測されるリスクの把握/健康被害への補償
  • 倫理審査委員会の審議を受ける
  • 個人情報を守る/匿名化
  • 研究不正(データの捏造・改ざん・盗用)を絶対に犯さない
  • 研究中に有害事象が起こったら直ちに研究を中止する

などがあげられます。この中でも、研究対象者の安全を確保すること不正行為は絶対にしないという姿勢が最も重要です。

いくら素晴らしい研究テーマであっても、研究対象者に害があれば非常に危険です。また、不正行為があっては研究の信頼性が損なわれてしまいます。

e-learningで研究倫理講習の受講をしよう

とはいえ、「倫理教育なんて受けたことなんてないよ」という人も多いと思います。研究倫理に関する講習はいくつかの機関がe-learningを実施しています。

これらの講習を受けることで研究倫理教育の受講証が発行してもらえます。倫理委員会の審査を受けるには、この受講証が必須になるので必ず取得しておきましょう。

悩みやすい研究倫理の項目

研究倫理について、実際に悩んだことや取り組んだことを紹介していきます。

企業と連携して、坂道シューズ(前足部が補高されていて、坂道を登るような歩行感覚が得られる靴)の効果を検証することになりました。実験としては研究対象者にトレッドミル歩行をしてもらい、下肢筋活動とエネルギー消費量を計測するというものでした。

予測されるリスクの把握/健康被害への補償

まず悩んだことは、健康被害への補償です。研究に坂道シューズを使用するわけですが、初めての試みだったので安全性がわかりませんでした。もしかすると研究中に靴ずれを起こしたり、つまずいて転倒してケガを負わせたりする危険性があります。

そこで私は、自分で坂道シューズを履いて予備実験を行いました。研究をはじめる前に、自分で坂道シューズの安全性を確かめたのです。

また、実際の研究では、研究対象者に予測されるリスクなどを十分に説明して同意を得てから研究を行いました。インフォームドコンセントという手続きです。

なお、研究で得られたデータは研究対象者が特定できない形式にし、USBメモリにパスワードをかけた上で、管理者のいる鍵のかかるロッカーに厳重に保管しました。これは研究対象者の個人情報を守るためです。

誠実性/研究不正(データの改ざん)を絶対に犯さない

次に悩んだことは、データについてです。

企業側からしたら、坂道シューズを履くことで下肢筋活動が上がり、エネルギー消費量も増えるといったデータが欲しかったようです。しかし、実際に研究を行なってみると坂道シューズを履いただけでは十分な効果が得られませんでした。

企業の期待に応えないといけないという思いがあったので、良い実験データが出ないことにとても悩みました。データを捏造したいという気持ちも少なからずあったくらいです。

そこで、指導していただいていた教授に研究の悩みを相談したところ、あることに気がつきました。「ネガティブデータにも意味がある」ということです。「坂道シューズを履いても効果がない」と否定的にとらえるのではなく、「坂道シューズを履くだけでは効果がないので、歩行指導などが必要である」とデータの意味をとらえ直すことができました。

こうして歩行指導を加えて再度実験を続けると、下肢筋活動やエネルギー消費量の増加を認めました。

この事例から、ネガティブデータでも見方を変えれば有益なデータになるということを学ぶことができました。

Conclusion

理学療法の分野で、研究倫理が注目されはじめたのはつい最近のことです。しっかりとした研究計画書を作成し、自分の属している施設や理学療法協会の倫理審査委員会の審議を受けましょう。手間のかかる作業かもしれませんが、研究倫理を理解して遵守することが、研究対象者の安全を確保し、研究者としての自分の立場を守ることにもつながります。

この記事があなたの研究に役立てばうれしく思います。

研究倫理を身につける→患者さんも自分も守ることができる

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