臨床研究の対象者と人数の設定|サンプル数は多いほどいいの?【理学療法研究】

研究

 

研究対象者はいったい何人?
どんな人を研究対象者に選べばいいの?

今回は対象者の選び方を説明するね。

ここが適当だと、多くの人に使えるエビデンスにならないから注意しよう

多くの人に使えるエビデンスって?

ポイントは外的妥当性があるかどうか

この記事の2つのポイントを抑えれば大丈夫だよ

今回の記事では対象者と人数の選定に関して解説していきます。

Introduction

臨床研究のデザインが決まったら次は研究対象者の設定です。

研究デザインの設定では研究の信頼性が高くなるようにバイアスを除去したり、観察・介入研究どちらで行うかを吟味したりしてきました(内的妥当性のコントロール)。

今度は、臨床研究の結果を多くの患者さんに一般化できるように、研究対象者を適切に選んでいかなければなりません(外的妥当性のコントロール)。

研究対象者を設定するうえでのポイントは2つあります。

どのような特徴を持つ人を対象にするか
対象者を何人集めるか

今回はこの2点について詳しく解説していきます。

この記事を読み終えるころには研究対象者の選択が適切に行なえるようになっていますよ。

研究への採用基準:どのような特徴を持つ人を対象にするか

研究に参加してもらうには、事前に採用基準を決める必要があります。

これがないとどんな人に参加してもらうのかがあやふやなままになってしまいます。

臨床研究を進めていくうえで、どんな特徴を持つ人を研究対象者にすればよいのでしょうか?研究対象者を選ぶうえで大切なのは、自分が持っている研究疑問(research question)です。

自分の研究疑問に沿うかたちで、研究対象者の年齢、性別、疾患、障害のグレードなど外せない条件をまずは列挙していきましょう。

例えば、
年齢・性別
疾患・そのグレード
術式
転帰

などは入れるべき条件です。

この条件をいくつつけるかで、研究への採用基準が変わってきます。

対象者の取り込み条件は広げるべき?絞り込むべき?

たとえば、「健常な人に通常の靴と特別な靴を履いて歩いてもらった場合に、どちらがよりエネルギー消費量や下肢筋電図に効果があるのか」を研究で明らかにしたい場合、いろいろな問題点があります。

なぜなら、「健常な人」の中には性別・年齢・地域・運動習慣・運動能力などさまざまな条件の人が入り混じっているからです。

「健常な人」と研究対象者の条件を広く設定している分、たくさんの数の研究対象者を集められますし、結果の一般化がしやすいのは事実です(外的妥当性がある)。

しかし、

  • 男女で歩行能力は違うのでは?
  • 20代と60代では結果が異なるのでは?
  • 運動習慣のある人とない人では歩行能力が違うはず

などさまざまな疑問が生まれてしまいます。これらを解決するには多くの対象者を集めて一般化していく必要があります。

一方で、「20代男性で運動習慣のある大学生」と条件を狭く絞り込んで設定した場合、研究自体の信頼性は高くなります。

しかし、全ての条件を満たす研究対象者を集めるのに苦労しますし、研究結果を20代男性で運動習慣のある大学生にしか反映できなくなってしまいます(外的妥当性が低い状態)。

このように、研究対象者の取り込み条件を広げるのか、絞り込むのかは、外的妥当性と対象者の集めやすさのバランスをとって決めることになります。

対象者を何人集めるか

次に悩むのは、研究対象者を何人集めるかということです。

いくらよい研究で素晴らしい結果が出たとしても、研究対象者の人数が1桁だった場合は、信頼性に欠けてしまいます。

具体的に何名が適切といった明確な基準はありませんが、研究対象者はある程度の人数が必要になってきます。研究対象者は最低でも10人以上はいないと、研究自体の信憑性が低いですし、統計学的な有意差も出にくいです。

しかし、難しいのが、研究対象者は多ければ多いほどいいというわけではないということです。必要以上に多くの人を参加させることは、倫理的に許されない場合があります。

たとえば、有効と考えられている理学療法Aとコントロール群BをRCTで比較するとき、研究対象者が多ければ多いほど、コントロール群Bの数も多くなります。

適切な治療を受けられない人が増えてしまうので、これは倫理的な問題があります。

まずは自分の所属施設で集めることが可能な取り込み基準と人数を作成しましょう。

対象者の設定の体験談

私はある企業が開発した坂道シューズ(前足部が補高されており、坂道を登るような歩行感覚が得られる靴)の効果を検証する研究を行なっていました。

PICOに当てはめて説明すると、

P:健常な大学生20名に
I:坂道シューズと
C:通常シューズを履いて歩いてもらったときに
O:エネルギー消費量や下肢筋電図はどう変化するのか

といった研究疑問になります。

最初は条件をつけすぎると人数が集まらないと考え、「健常な大学生20名」と広めに設定していたのです。

実際にデータを取ってみると良い結果は得られませんでした。

そこで、研究対象者を少し絞り「運動経験のある健常な男子大学生20名」としました。すると、エネルギー消費量や下肢筋電図で良いデータが得られました。

この経験から、対象者の設定の際にはある程度条件を絞るのも必要だということを学びました。また、20名という研究対象者の数ですが、1人にかかる実験時間や自分に与えられた研究期間と照らし合わせて選択しました。

このように、自分のキャパシティーに応じて研究対象者の数を設定することも重要だと考えます。

Conclusion

研究対象者の設定について解説していきました。

適切に研究対象者を設定するためには、「どのような特徴を持つ人を対象にするか」「何人集めるか」という視点が必要です。

研究対象者の適格条件を広げるにせよ狭めるにせよ、また何人集めてもメリットとデメリットがついてきます。

大切なのは、自分の研究疑問に沿ったかたちで研究対象者を設定することです。自分は何を明らかにしたいのかを明確にすることが、より良い研究対象者の設定につながります。

どれだけ多くの人に適応できるエビデンスを作れるか→対象選定で決まる!

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