学会抄録の書き方【理学療法研究】

論文・学会
学会抄録ってなんだ
学会抄録の書き方がわからない
こんな疑問に答えます。
この記事を読むと、
学会抄録とは
学会抄録の書き方
ポイント・注意すべき点
がわかります。
僕は年間2–3回ほど学会発表するので、同じ数だけ抄録を作成しています。理学療法学会系であれば1200文字、医学会系であれば600文字に発表内容を落とし込みます。慣れてるまでは、書き方やこの文字数制限に悩まされていました。
後輩からもよく聞かれるのでまとめていきたいと思います。

医学会系の大きな学会だと600文字の抄録に加えて、100文字のミニ・アブストラクトを追加で求められることもあります。自分の研究を短い文に落とし込むためには1番伝えたいことは何かを再考する必要がありました。

学会抄録とは

抄録とは「必要な部分だけを抜粋すること」で、学会抄録とは発表内容が抜粋して書かれている文章になります。学会で発表する場合は演題登録時にこの抄録の提出が求められます。
似たような言葉に要旨という単語もあり、これは内容のあらましや主要な点のことをさしますが、学会要旨と学会抄録はほぼ同義として使われています。
実際に英語ではどちらもAbstract(アブストラクト)と表記されます。
どちらにしろ求められるものは、論理的に首尾一貫しており、簡潔に書かれた文章になります。加えて、発表内容の新規性や臨床への示唆に富んだものが良い学会抄録となります。

学会抄録の書き方

学会は学術発表の場になるので、論理的かつ簡潔に発表内容をまとめていく必要があります。
論理的と言われると難しいですが、【はじめに】→【方法】→【結果】→【結論】(→ 理学療法学会系であれば最後に【倫理的配慮、説明と同意】)の順で構造化された抄録を作成すると自然と適した形式になります。
初めてやあまり経験のないときは、難しい用語や記載を無理に入れず、話の筋が通ったわかりやすい文章を書くことを心がけるといいと思います。

はじめに

この段落では、
①研究対象となる疾患の概要
②重要な先行研究の紹介
③問題点の提示と絞り込み
④目的の明確化
を記載します。
文字数制限にもよりますが、1200文字制限であれば①〜④を順に書き、600文字制限であれば③と④に絞って書きます。もし方法や結果が長すぎる場合は④の目的に絞り込んで書いている人もいます。

方法

この段落では、
①研究デザイン
②対象者の提示と群分け
③測定・評価項目
④主要アウトカム
⑤統計解析方法
を記載します。
この段落は1200文字でも600文字でも絞り込まずに同じ順で書きます。(どうしても600文字制限だと簡略化した書き方になってしまいますが。)
僕は抄録を作成すると、1200文字制限だとだいたい1/3、600文字制限だとだいたい半分ぐらいがこの段落になってしまいます。

結果

この段落では
①ランダム化・群分けされた各グループの人数、追跡率
②解析結果
③有害事象(もしあれば)
を記載します。
この段落は客観的な事実や数値のみを過去形で記載し、自分の解釈は含めずに書きます。この段落も1200文字でも600文字でも絞り込まずに同じ順で書き込んでいきます。
僕が書くと文量的には方法の次に多くなります。

結論

この段落では
①重要な結果の解釈
②先行研究との比較
③はじめにで提示した問題点や目的に対する応え
④限界点
⑤展望や臨床応用(もしあれば)
を記載します。
この段落は発表者の意見を得られた結果に基づいて自由に述べることができます。

あくまでも結果に基づくことが大切で、誇張しすぎるとオーバーディスカッションになってしまうので注意しましょう。

はじめにで提示した問題点や目的に対する応えをこの段落に記載することで、話の筋が通った抄録を書くことができます。

ポイント・注意すべき点

文章は簡潔かつ明瞭に

学会参加者や査読者たちは、多数の抄録に目を通しています。冗長な分は頭に入ってきません。必要な情報がスムーズに頭に入ってくる文章だととても良いです。
意外と「てにをは」が抜けている口語調で書いてくる後輩もいるのですが、基本的に文語で記載します。ちなみに「ですます調」よりも「である調」での記載が一般的です。

一つの発表、ワンテーマ

一つの発表に複数の目的があるのはあまりよくありません。いくつも伝えたいことはあっても、発表時間は7分ぐらいです。最も伝えたいことに一つに絞り込んでまとめましょう。そのほうがテーマがきわ立ちます。

話の軸を意識する

結論の項目にも書きましたが、【はじめに】から【結論】まで軸が通っていることが重要です。【はじめに】で目的を明示して、【方法】でそれを確認する手段、【結果】を示し、最後に【結論】で応えを明示します。【方法】や【結果】も測定したものすべてを述べる、出た結果をすべて書き込むのではなく、目的の達成に必要な項目をしっかり選定します。
そうすると抄録全体に軸が通り、一貫性のある抄録に仕上がります。

書きあがったら少し寝かせる

抄録が書きあがった!と思ったら1週間(少なくとも2-3日)寝かせてみてください。1週間後にもう一度読み直すと「あれ?ここわかりにくい」と思う場所が出てきます。書き上げたときには気づけなかった点にも気づけるようになります

Conclusion

今回は学会抄録の書き方についてまとめました。ポイントは1番伝えたいことをしっかり考えて、文章に軸を持たせることです。文字数制限の中で必要な項目を過不足なく記載していくと自然と文章が整ってきます。この記事を参考にまずは書き始めてみてください。この記事があなたの研究や臨床に役立てばうれしく思います。
1番伝えたいことを考える→それを軸に少しづつ肉付け

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