Introduction
理学療法研究を始める際、最初につまずくのがテーマ設定だと思います。「臨床で疑問に思ったことをやればいいんだよ」と言われてもなかなか簡単ではないですよね。そこで今回は「理学療法研究のテーマ設定」に関する記事を書いていきます。
本記事の内容
臨床疑問を見つけて分類する
臨床疑問を研究疑問に定形化(PICO)する方法
研究テーマ設定までの具体例
臨床疑問を研究疑問に定形化(PICO)する方法
研究テーマ設定までの具体例
この記事では臨床で生じる疑問を研究テーマに変換していきます。最後に上記の流れを僕の具体例を用いながら解説していきます。
臨床疑問を見つけて分類する
手順①臨床疑問を見つける
先ずは何より臨床疑問を見つけなければいけません。もし「すぐには浮かばないよ」という人は以下の視点で日々の臨床業務を見直してみるといいかもしれません。対象者の訴えや先輩の意見・論文に書かれていることは臨床疑問を生み出すヒントになります。
対象者の訴えを注意深く聞き、掘り下げる
日々の臨床業務において問題となっていることに着目する
自分の知識や職場の当たり前をまっさらな目で吟味する
過去の報告で報告されていること(既知)とまだ明らかになっていないこと(未知)を整理する
日々の臨床業務において問題となっていることに着目する
自分の知識や職場の当たり前をまっさらな目で吟味する
過去の報告で報告されていること(既知)とまだ明らかになっていないこと(未知)を整理する
純粋に自分が「もっとよくしたい」と思うことは臨床疑問になる可能性があります。
手順②臨床疑問を分類する
次に見つけた臨床疑問を分類していきます。ここでは簡単に以下の4つに分類してみます。
例
病態・経過 脊髄ショックとは何ですか?
疫学 脊髄損傷の発生原因はどのようなものがありますか?
診断・評価 脳卒中患者の歩行能力の評価として適当な方法は何ですか?
理学療法治療 頸椎モビライゼーションによって,頸部局所における疼痛は改善しますか?
多くの臨床疑問はこの4つに分類できると思います。ちなみにこの臨床疑問の例は理学診療ガイドライン第1版”ダイジェスト版”から引用しています。日常診療の中で一度は感じたことがあるものが多いのではないでしょうか。
臨床疑問を研究疑問に定形化(PICO)する方法
次に臨床疑問を研究疑問に変換していきます。研究疑問には決まった形式がありこれを「PICO(ピコ)」もしくは「PECO(ペコ)」と言います。
このPICOとは、
どのような患者に(Patient)
どのような評価・治療をしたら(Intervention)
何と比較して(Comparison)
どのような結果(Outcome)になるか?
どのような評価・治療をしたら(Intervention)
何と比較して(Comparison)
どのような結果(Outcome)になるか?
の4要素に定型化する手法です。この4つの要素の頭文字をとってPICO 、あるいはIをE(Exposure:暴露)に変えてPECOと呼ばれています。
PICOもしくはPECO(ここにはあげていませんがPEO)は研究デザインによって変わります。先ほどの臨床疑問の分類表と比較してみます。
臨床疑問の分類 研究デザイン 研究疑問構造
病態・経過 観察研究 PECO
疫学 観察研究 PECO
診断・評価 尺度開発 PECO
理学療法治療 介入研究 PICO
このように臨床疑問から研究疑問まで定型化していきます。
研究テーマ設定までの具体例
ここからは僕がこれまでに経験した、臨床疑問から研究テーマ設定までを具体例として記載してみたいと思います。
具体例①:リハビリロボットは脳卒中発症後のリハに有効か?
昨年、市の取り組みとして当院にリハビリロボットが3ヶ月間だけ配置されることになりました(無料で!)。一旦は喜んだのですが、無料の条件としてこのロボットスーツの効果を検証してほしいと依頼を受けることになりました(COIありありですね笑)。実際に取り組んだのは後輩なのですが僕もサポートしていたので今回の具体例にあげてみます。
これまで当院にはリハビリロボットの配置はなかったのでシンプルに、
「リハビリロボットは脳卒中発症後のリハビリに有効か?」といった臨床疑問を設定しました。この疑問は理学療法治療に関するものに分類されると思います。疑問の解決には介入研究を用いるのが良さそうです。
ですので、研究疑問の定型化にはPICOを用いてみます。
Patient:脳卒中発症後のリハビリ対象者に、
Intervention :リハビリロボットを用いた理学療法を提供すると、
Comparison :通常のリハビリを提供した人たちと比べて、
Outcome :FIM利得が高くなるか?
Intervention :リハビリロボットを用いた理学療法を提供すると、
Comparison :通常のリハビリを提供した人たちと比べて、
Outcome :FIM利得が高くなるか?
といった感じです。なんとなくそれっぽいですよね。
具体例②:破局的思考はTHA術後の予後不良因子となるか?
当院ではTHAの術後評価に患者立脚型評価を導入して数年経っているのですが、術後の患者立脚型評価で術前と変わらない、もしくは不良アウトカムを呈す人たちが一定数存在します(先行研究と同等ですので当院だけが悪いわけでもないと思うのですが…)。先輩から術後に不良アウトカムを呈す人たちを術前から発見できれば、より良い理学療法を提供できるのではないかと提案を受け、チェレンジして見ることになりました。
臨床疑問は「THA術後の予後不良因子には何があるのか?」に設定しました。この疑問は予後や経過に関するものに分類されると思います。疑問の解決には観察研究を用いるのが良さそうです。
ですので研究疑問の定型化にはPECOを用いてみます。
Patient:THAを受けたリハビリ対象者の内、
Exposure:破局的思考を有する人たちは、
Comparison :有さない人たちと比べて、
Outcome :術後WOMAC点数が低くなるか?
Exposure:破局的思考を有する人たちは、
Comparison :有さない人たちと比べて、
Outcome :術後WOMAC点数が低くなるか?
といった感じです。これもそれっぽい感じですよね。
この例を少しもじってもらうと臨床疑問から研究疑問の定型化が少し楽にできるかもしれません。
Conclusion
今回は「理学療法研究のテーマ設定」に関して記事を書いてみました。本記事があなたの研究テーマ設定に役立てば嬉しく思います。
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